メジャー&キャリア

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岡田さん 第三回

 

<第三回:深さと真理で勝負する>

水庭

留学から日本に戻ってきて、日本の企業に就職なさったわけですが、今はどんなお仕事をしているんですか?

そして、ICU学んだ事って、仕事に生きていると感じますか?

岡田

むしろ、仕事ではほとんどcritical thinkingをやっているんじゃないかって思うくらい、ICUで学んだ事の延長線上にある気がしますね。

鵜飼

へー!

岡田

僕は今、広告会社の中ではちょっと変わった仕事をしているんです。

普通は、クライアントの企業が作った商品やサービスが既にあって、それをどうやって世の中に広めるのか、をお手伝いするのが広告会社の基本的な仕事なんですね。

ところが僕が所属しているコンサルティング局というのは、その手前の、そもそもどんな商品を作るべきか、どんなお店を作るべきかという所のお手伝いもする部署なんです。

水庭

広告会社にもコンサルティング部門があるんですね~。

岡田

世の中にはいろんな“コンサルティング”と名前が付く仕事があるから分かりにくいですよね。

僕らが商品作りのコンサルティングをする時に求められるのは、メーカーがついつい忘れがちな消費者視点を気づかせてほしい、みたいな事なんだけど、そういう時に大事なのが、実はcritical thinkingなんですよ。

例えば、あるガソリンスタンド会社のお仕事をした時の話です。経営企画部長みたいな偉い人が、「ガソリンスタンドはどこもお客さんが減って苦しんでいる。何か良いアイデアを打ち出さなきゃいけないんだけど、何をしたらいいのかよくわからない。」ってすごく悩んでいたんですよね。

水庭

そんな相談もあるんですね。

岡田

そうなんです。で、カッコいいCMを作ったら良いんじゃないかとか、子どもが喜ぶヒーローショーをしたらいいんじゃないかとか、そんな事はいくらでも思いつくんだけど、それでこの部長さんの悩みは解決しないなぁ、と。

そもそも、根本的な悩みはなんだろうかと考えたんです。それで、次に会った時にその部長さんにお話ししたのが、「銭湯とスパ」の話でした。

水庭

銭湯とスパですか‥‥? ガソリンスタンドとどう関係があるんですか?

岡田

燃費が良くなったり、そもそも車に乗らない人が増えて、ガソリンスタンドのお客さんが減ってきたのって、銭湯に似てるかも知れませんね、という話なんです。

銭湯も昔は日本中にたくさんあったけど、今ではどんなマンションにもシャワーもお風呂もあるから、だんだん減ってきたよね。

で、銭湯のおやじさんが、『このままではまずい。若いOLさんに来てもらうには、どんなアイデアがあるかな』と思って、石鹸とかタオルとかをおしゃれにしてみるとか、ゆず湯にしてみるけど、会社帰りのOLさんはなかなか来ないよね。

水庭

そうですね。もし僕がOLだったとしたら、行こうとは思わないです。

岡田

一方で、OLは会社帰りに、スパには行きますよね。

お湯が出るのは、銭湯と一緒じゃないですか。何が違うんだろうと考えていくと、結局、銭湯っていうのは、『体を洗う』ところで、スパっていうのは、『疲れを癒す』場所なんです。

つまり、見た目の話ではなくて、お客さんがその場所をどう思っているのかっていう、価値が変わらないと、新しい人は来ないですよね。

水庭

ああー、なるほど。

岡田

そういう話をしたら、その部長さんが、ハッとした顔をして、「まさにうちのガソリンスタンドの店長は、銭湯のおやじなんです。お客さんを増やそうとして各地の店長ががんばってはいるんだけど、どうしても発想が中古車販売とか、レンタカーとか、車関連になってしまうんです。」って言ったんだよね。

でも、わざわざ、車を買ったり借りたりするのに、ガソリンスタンドには行かないですよね。

鵜飼

確かにそうですね。

岡田

「銭湯屋がスパに大転換するように、ガソリンスタンドも、単にガソリンを入れる所じゃなくて、『○○をしに行くところだ』 っていう風に、新しい価値を作ってあげないと、どんなアイデアを考えてもダメですね。」という、そんな話をしたんです。

僕は、ガソリンスタンドを経営した事も無いし、スペシャリストではないけど、「そもそもガソリンスタンドになんで今、人が来てないか」っていう問題を、企業の人とは違う視点でcritical thinkingするのが自分の役割じゃないかな、と思っているんです。

鵜飼

なるほどー。

岡田

他にも、食品会社だったり、化粧品会社だったり、いろんな業界の仕事があるんだけど、共通しているのは、みんな先が見えずに悩んでるってことなんです。

ある特定の分野については負けないくらいの技術や知識があるんだけど、それでも「うちの会社は今後どうすればいいんだろう」って悩んでいる時に方向性を見つけていくのは、リベラルアーツ的な仕事なんじゃないかな、って勝手に思っています。

鵜飼

広い視点とか、一つに捉われないっていう感じなんですかね。

岡田

そうかもしれないね。先が見えない時こそ、専門分野ではなく、もっと広い、「真理」とか「本質」で勝負する、みたいな。

他の大学の人だったら、例えば経営学の専門家なら経営分析を、マーケティングの専門家ならマーケティング分析を、となるのかもしれないけど、ICU生だったらもっと広い視点で、「そもそもガソリンスタンドって人にとってどういう価値があるんだろう」っていう話ができると思うんですよね。

ICU生って、そういうの好きじゃないですか(笑)

水庭

すごくICU生っぽいですよね(笑)

鵜飼

そういう意味では、ICUで学んだリベラルアーツが、仕事でも活かされているってことなんでしょうか。

岡田

リベラルアーツの意味も、学生時代は「自由度が高いってことかな」くらいにしか思ってなかったけど、社会人になってイメージが変わりましたね。

例えば、飲み屋とかで、 ICU以外の人と話す話と、ICU生同士で話す話は、深さが違う気がするんですよ。ICU生同士って気付かない内に、ふと真面目な話になるんですよね。

鵜飼

なります、なります(笑)

岡田

でもICU生以外だと、「あの子はかわいいよね」「あの部長は最悪だよね」みたいな話がすごく多くて。

「話が上手い」にも色々な定義があると思って、相手から振られたら何でも返せるとか、笑いを取れるとか、そういう話の上手さは他の大学の人の方が上手いですね。

でも、「深い話」っていうのは、ICU生がすごく得意な所だと思います。卒業してから久しぶりにICUの友達とかと飲んだりすると、気が付いたら深い話になっているんですよね。話の内容も「それってマックスウェーバー的に言うと」みたいな。

鵜飼

(笑)

岡田

もちろん、マックスウェーバーを今でも完璧に覚えているわけじゃないですよ。でも、おぼろげながらも覚えている色んな材料を使って、深い話をする傾向がある気がしますね。

リベラルアーツっていうのは、何を学ぶかよりも、「深さ」を学ぶっていう事なんじゃないかな、って思いますね。浅く広くの知識って思われがちだけど、むしろそういういろんな知識を使いながら、深く潜っていくっていう感じかな。

深めるためのツールとして、critical thinkingがあって、各分野のいろんな知識が学べる。深く考える人になる準備のための4年間なのかなって、今になれば思いますね。

鵜飼

ということは、学生時代にリベラルアーツが出来上がる、というわけではないんですね。

岡田

そうだね。

だから、深く掘るための道具を揃えたり、準備運動をしたり、ちょっと試しにやってみる4年間を過ごした上で、社会に出て「よし、どこ掘るか」みたいな。そういう感覚がありますね。

鵜飼

ロールプレイングゲームで言うところの「装備」みたいな感じですね。

岡田

そうそう。敵に出会ってから装備を買おうと思っても、なかなか難しいんだよね。

つまり、若いうちにしか出来ないことってあると思う。PEで和太鼓もやるし、専攻と違うことも勉強するし、キリスト教概論も受ける。もちろん牧師になるわけじゃないんだけど、何かを深く考える時に、そういった知識とかが意外と役に立ってくるんじゃないかな。「あ、それってキリスト教と一緒だな」みたいな。

鵜飼

そうなんですか?

岡田

この間、「うちの会社は転職してくる人がすごく多いから、ビジョンや企業理念や行動規範を1枚にすっきりまとめたバイブルを作りたいんだ」と言うクライアントの方に会ったんです。

でも、ICU高校の夏休みの宿題で聖書を読まされた僕としては(笑)、なんだかちょっと違うなーって思ったんだよね。

「あなたが今おっしゃっているバイブルって、『わが社の理念はこうだ』という簡潔な定義を作りたいっていうことですよね。でも、実際の聖書には『愛とはこうである』って簡潔に定義がしてあるかと言えば、全然そんな事ないんです

むしろ、イエス=キリストが行なった、いろんな具体的なエピソードが長々と書かれている。そんなたくさんのエピソードの中から、『愛とは何か』を読む人が感じ取っていく。そういうのがバイブルなんです。

だから、会社の理念を数行で書いておしまいではなく、むしろ『うちの会社は過去、こんな時にはこう対応した。こんな時にはこう乗り切った』というエピソードをたくさん積み重ねた方が、転職してきた社員の人にとってはバイブルになるんじゃないですか」っていう話をしたんです。

そうしたら「そうかもしれない!」って、結構喜ばれたりして(笑)。

鵜飼

(笑)

岡田

クライアントが「バイブルが作りたいんだ」と言っている時に、「はいはい、了解しました。すぐやります」と答えるのではなくて、「ちょっとまてよ、バイブルで示す企業理念って、何なんだろう」っていう風に、少し立ち止まってcritical thinkingモードになれるのも、ICUの学びに感謝している所です。

しかも、「あなたが思っているバイブルは違うんじゃないか」っていうのを言う時に、一応聖書を読んだことがあって、「実際はこうなんですよ」って言えた方が、相手をハッとさせられるじゃない。

鵜飼

そうですね。

岡田

そういう、「本当にそうなんだろうか」と思ったり「こういう見方も出来るかも」と深く掘り下げたりするための知識とか、物事を批判的に見る視点を、ICUで得られたような気がします。

これは私に限ったことではなくて、ICUの卒業生同士で話していてもそういう会話になるから、ICU生に共通するDNAみたいなもので、みなさんも知らず知らずの内に身に付いているのかなって思いますよ。

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もくじ

第一回 湯島天神の鉛筆がきっかけで‥

第二回 留学で確信した事

第三回 深さと真理で勝負する

第四回 マイノリティを楽しもう



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メジャーとキャリアの関係性について、現役ICU生が同窓生にインタビューしました。
同窓会とICUアカデミックプランニング・センターの共同企画です。

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