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卒業50周年記念式典 9期生代表挨拶 高橋一生様

桜祭り2015において、卒業50周年記念式典が行われました。

9期生を代表された高橋一生様の「代表者あいさつ」をご本人の了解を得て掲載させていただきます。

ICU卒業50周年挨拶

半世紀前、この教会から我々百数十名は社会に出てゆきました。晴れた、風が少し冷たい日でした。
当時はみな多かれ少なかれ似たような、初々しい若者でした。期待と不安をたっぷり抱え、日差しが妙に眩しかったのを憶えています。50年後、このようにまたこの教会に皆が一緒に迎えられるなどと、その時、誰が想像したでしょうか。それぞれの事情で、今日来れなかった仲間も心で参加してくれているでしょう。天国から参加している何人かの仲間もいます。今日集った一人一人は一本一本の白髪に、そして一つ一つの皺に、人生の栄光と苦難をたっぷりと浸み込ませています。我々は50年前よりも個性にあふれ、それぞれの形で美しくなっていると思います。

一人一人重みのある50年を歩んで来ました。私はとてもそのみんなを代表する資格はありません。
多様な、真剣な歩みでした。しかし、この50年の、とても短時間で語りつくせない、豊富な経験をとおして、おそらく皆共通して強く感じていることがあると思います。それは、人生を豊かにするのは何よりも「vocation;使命感、志」だということです。

人生は学びの連続です。苦難の連続でもあります。それをすべて豊かなものにしていくのは、時には喜びに、さらには栄光にもしていくのはvocationです。ICUの4年間は我々に多様な、かつ貴重な学びの経験をさせてくれました。その中で、一番大切な学びはvocationについて考え、仲間たちと熱く議論したことだと思います。早い時期にvocationを見つけた者、卒業後だいぶ経ってようやく見つけた者、またついには見つけ損なった者、多様です。そのすべてを通じて、vocationが人生を豊かにするもっとも大事なものであるという強い思いがあります。

ICUのリベラルアーツが真に生きたものになるためには、ICUの教育全体が一人一人の学生のvocation探しに焦点を合わすことでしょう。そのためには先生一人一人が自分の講義が自分にとってvocationであるということを徹底することが重要です。自分の専門と人格が一体となったvocation を学生にぶつけ、学生と真剣に向き合い、自分も学んでいる真っ最中であることを明確にすることが大事です。vocation を探求する学びは迫力があります。vocationが見つかったら、それのための学びは最も身につくものです。幅の広いリベラルアーツにvocationという芯を一本通すことによって、深みをも備えた学びが可能になるはずです。

けっしてjob、就職、 に有利になるための教育などを目指さないでください。また最近はやりの
グローバル人材の養成などということは目指さないでください。それらのことはICUが目指すものではないはずです。vocation を探す、それが見つかれば、あとは自分でそれを目指し、豊かな学びの森に、自己修練の道場に入っていきます。そのような人が世の中につくし、豊かな人生を過ごすことができる、ということが、我々が50年の真剣な人生から学んだことです。ICUのリベラルアーツをさらに優れたものにし、世界最先端のモデルにするためには、「vocation 探求のキャンパス」と明確に位置づけることが何よりも大切だと思います。

2015年3月28日

高橋一生、9期 1965年3月卒業