INTERVIEWS

主催者 齋藤顕一・渡辺真理

プロフィール

齋藤 顕一
語学科でコミュニケーション専攻。経営コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニー入社。87年に同社パートナー。95年に同社を退社し、96年にフォアサイト・アンド・カンパニーを創業し現在に至る。2002年から国際基督教大学同窓会長、2006年から同窓会理事。2011年6月より大学法人理事。2017年6月より大学法人評議員。元ビジネスブレークスルー大学大学院および大学学部教授。

渡辺 真理
人文科学科で日本文学専攻。元アメフト部マネージャー。1990年TBSに入社。『モーニングEye』『筑紫哲也NEWS23』等数々の番組を担当。1998年同社退社後フリーアナウンサーに。テレビ朝日『ニュースステーション』に番組終了まで出演。現在は、NHKBSプレミアム『BS歴史館』BS朝日『恋するドライブ』をはじめテレビ、ラジオ、雑誌など幅広く活躍中。

 

若い人に魅力的な先輩達の生き方や横顔を見てもらうことで、それが跳び箱みたいに何かを越える時の役になれば嬉しいし、どんな同窓生が、どこで、どんなふうに活動しているかわかったら、もっと便利で楽しくないかな… というのがこの企画を相談したきっかけです。
齋藤
ところで、今回の企画なんですけど、渡辺さん、なんで僕にこの話をもってきたんです?同窓会から渡辺さんにお願いすることはあっても、渡辺さんから僕にお願いはまったくなかったからな〜。
渡辺
いえ、つたない司会でほとんどお役に立てていないのが現状ですけれど、参加させていただきながら、同窓生の方々にお会いしていて思ったんです。どんな同窓生が、どこで、どんなふうに活動しているかわかったら、もっと便利で楽しくないかな…と。 ICUは教養学部ですから、医師や弁護士になった卒業生はいないのかな、とか。仕事上、何かを頼みたい、聞きたいと思った時に選択肢の中に同窓生が入る方が、きっかけや展開になりやすい面もあるんじゃないかな、とも。ICUの先輩方は群れない、課さない、縛らない…と言いますか、学閥や上下関係でもの申すところがない風通しの良さを社会に出て特に感じていました。その分、そこに相互関係のきっかけとなる情報が加わったら、自由な行き来が自然に築いていけるのじゃないかと思ったのがきっかけです。もう一つの理由は、アナウンサーという仕事をしていますと、顔と名前が一致するということもあってでしょうか、柄にもなく講演会などのご依頼をいただくこともあるんですが、一方通行で聞いていただけるほどの引き出しもまだ無いので、お断りしているんです。ただ唯一、学生さんからの依頼だけは受けるようにしています。これからどんな可能性も秘めている学生の方には、一つのサンプルとして身体だけ持って行くので、聞きたいことを聞いてくださいという乱暴なやり方なんですが、自分より後から育っていく人達には単純にもっと自由に、もっと大きくなってほしいな〜という願望がありまして。それと同じくICU生にも魅力的な先輩達の生き方や横顔を見てもらう機会が増えたら、具体的には就職、漠然とでも生きてく上でささやかなプラスになるのじゃないか、と思いました。たまたま「聞く、伝える」という仕事をしている中で「すごい!」と思う方々、その考えや乗り越え方などたくさんの「!」に出会います。自分だけの「!」にしておくのはもったいないので少しでも還元できればと思っています。社会にでると「働くとは何か」につきあたる時が遅かれ早かれ来るかと思います。私という至らないけれど1個の媒体を通して、様々な先輩方の人となりや苦労、喜びや悟りを垣間みていただけて、それが跳び箱みたいに何かを越える時の役にたてれば、こんなに嬉しいことはありません。齋藤さんにご相談したのは、「きっと斎藤さんなら、最もいい形を示してくださる…」と、どこかで確信してたからです。不躾に失礼致しました。

人生のなかでその人を変えるその人自身の「琴線に触れる」ことは結構ある。 早いうちに「自分で意識していない琴線」に触れるためにも、いろんな人に会って、それが「すご〜く意味のある出逢い」であることに気がつけばいい。(斎藤)

若い人にはフラフラしてもいいから、楽しみつつ「好き」と思える何かを 見つけて進んで行ってほしい(真理)

齋藤
なるほど、僕に声をかけてくれて、どうもありがとうございます。会長を退任したので、同窓会活動はほとんどやらないつもりだったのですけど、またやる気になったので嬉しいです(笑)。今、渡辺さんのお話を聞いていて思ったのですけど、僕も同じ考えを持っているんだと思います。若い人が自分の才能をどのような方向に伸ばせばいいのかと考えた場合、それを気づかせてあげるために「何かできれば」と普段から思っているので、一緒にそれが出来るのはいいですね。人生のなかでその人を変えるきっかけは結構あるもんで、たまたまそれが、その人自身の「琴線に触れる」ことだったんですね。早いうちに「自分で意識していない琴線」に触れるためにも、いろんな人に会って、それが「すご〜く意味のある出逢い」であることに気がつけばいいんです。だから今回の企画はそういった意味でも素晴らしいものになればと僕も思います。 ところで、なんで渡辺さんはアナウンサーになったんですかね。
渡辺
アナウンサーになろうという「志」を持って会社に入ったわけじゃなかったんです。私が卒業した1990年はバブル真っ只中で、今の在校生と違って2年、3年から就職を考えたりしていなかったんですね。考えていた友達はいたと思いますが、私がボーッとしてたという意味では全く考えていなくて、4年になった時に周りから心配されて就職科に行ってみる始末でした。その時に張り紙が出ていたのがテレビ局のアナウンサー講座という就職口で、学生時代にNHKでアルバイトしていたこともあり、まずは就職活動を始めようと面接に行ったのがきっかけです。時代がバブル期で網の目がそうとう甘かったのでしょうか、内定をいただいて入社しました。後々、ご一緒した久米さんも「君はTBSで恵まれていたからね〜」と仰ってましたが、仕事も会社も楽しくーー実際は、そう感じる暇もないくらい時間が飛んでいくような毎日でした。今もアナウンサーとしてまだまだ至らず道半ばですが、この仕事に就いて色々な方々の貴重なお話に数多く出会えたことは幸運だと思っています。で、今まで伺ってきたことを通して見てみると「好きなものを見つける」大切さを感じます。例えば、中田選手がサッカーに出会ったように、イチロー選手が野球に出会ったように、楽しいと思うもの、上手いと褒められて伸びるもの、或いは悔しさをバネに頑張って得意になったものに出会って磨いていくことが充実や幸せにつながって、その延長線上に社会への貢献に通じているケースが多いことを感じました。何でもいいみたいです…確立された分野でも、既存のジャンルでも、社会で重用される事柄でなくてもいいから「好きだな、楽しいな」と思える自分の肌実感に忠実に熱中すれば、実を結ぶこともある…結ばなくても楽しさは減らないし、むしろどこかに広がっていくみたいです。遠回りも決して無駄でないけれど、早く好きなことに出会うのも、それはそれで幸せなことだと思います。斎藤さんが「若い人が才能をどの方向に伸ばせばいいか」というお話をなさいましたが、私が出会いの中から紡いできた話を総合すると、どんなにフラフラしてもいいから、楽しみつつ「好き」と思える何かを見つけて進んで行ってほしいな〜と思います。
齋藤
へ〜面白いですね。好きに出会うですか。。。僕は自分のことを振り返ってみると、経営コンサルティングを知らなかったわけやし、ただがむしゃらに働くことだけに集中していたから、好きとか嫌いとかも考えたことがなかったんです。今はコンサルティングだけではなく、大学院で問題解決法を教えることもしているんですけど、これも頼まれたからはじめたんですね。よく人に「教えるのがうまい」とか、師匠である大前研一さんにも「教えるのは君の天職や〜」と言われることがあったのですけど、それを好きだと一度も思ったことはなかったんです。でもやっぱり、自分が育てた人が活躍しているのをみたり、僕の考え方を伝えることで価値を感じてもらうことは、すごく嬉しいし楽しいし、「生きてて良かった」と思うんです。僕の場合は、自分の「好き」とか「嫌い」とかの思いからというよりも「教える」という「きっかけ」に出逢ったことが、僕にとって重要だったのだと思います。
渡辺
詩人の谷川俊太郎さんが私大好きなんですが、以前お目にかかった時に「詩人って職業は無いんです。自称なんです。詩人と名乗れば、詩人なんです。それが仕事として成り立つかは社会の需要と見合うかどうかですけれど」と仰って。医師や弁護士、税理士など資格を必要とする仕事以外は、考えてみたらそうですよね。資格が必要な職でも続けていく過程では、同じかもしれません。今の齋藤さんの話にも通じるものがあると思いました。実際、好きなものに出会うって、なかなか難しいのかもしれません。好きなのかどうか分からないと思いながら続けて行く先に何かが待っている場合もあるでしょうし…。探し方も見つけ方も、きっかけとするかしないかも、岐れ路の選び方全てがそれぞれの持ち味で、その違いが面白さでしょうし。 だから、斎藤さんにご相談した企画が誰かの目にとまって何かのきっかけになるかは分からないけれど、きっかけとなるかもしれないことは世の中にたくさん転がってた方がいいんじゃないかと思っていま す。チャンネルがたくさんある方が楽しいですから。職業柄、同窓会の中で私がチャンネルを増やす手伝いを出来るとしたら、自分が媒体となって卒業生の横顔を伝えることなのかな、と思った次第です。
人生において「正しい判断をした」というのは一概には決めることはできない。 でも、その人が進むべき道を選ぶということは、それを選択するに至った『ある考え方』 がある。今回色々な人と話し合いをするときに、僕はその「考えの共通項」を見出したい。
齋藤
渡辺さんの考えは面白いね。「自分が媒体として・・・」すごく意外だけど渡辺さんらしいと思いました。出逢いを考えると、僕は、「良い類」とつきあっていることがすごく重要となると思っているんです。よく僕が会社のメンバーやクライアントに伝えるのは、「自分がなりたい人と一緒にいることが重要」と言うんです。 どんな人でも、若い人は特にそうかもしれないけど、自分のことがあんまり分からないから、自分にとって最適の道を選択するのはすごく難しい。人生において「正しい判断をした」というのは一概には決めることはできませんけど、その人が進むべき道を選ぶということは、「それを選択するに至った『ある考え方』がある」と思うんです。今回色々な人と話し合いをするときに、僕はその「考えの共通項」を見出したいと思っているんですよ。実はこれは、企業行動から学んでもらう時にも同じなんですけど、良い会社の取り組みを伝えてもそれはなんとなくひとごとのようで面白くない。でも、成長し続けている良い会社の共通項を見つけてそこから学ぶことは極めて重要になるんです。まぁ気を楽に「楽しい」インタビューというか気楽な話し合いをしていきましょう。僕は楽しくないことはやりたくないしね!
渡辺
私もそうです!是非楽しくやっていきましょう。よろしくお願いします!!


プロフィール

齋藤 顕一
語学科でコミュニケーション専攻。経営コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニー入社。87年に同社パートナー。95年に同社を退社し、96年にフォアサイト・アンド・カンパニーを創業し現在に至る。2002年から国際基督教大学同窓会長、2006年から同窓会理事。2011年6月より大学法人理事。2017年6月より大学法人評議員。元ビジネスブレークスルー大学大学院および大学学部教授。

渡辺 真理
人文科学科で日本文学専攻。元アメフト部マネージャー。1990年TBSに入社。『モーニングEye』『筑紫哲也NEWS23』等数々の番組を担当。1998年同社退社後フリーアナウンサーに。テレビ朝日『ニュースステーション』に番組終了まで出演。現在は、NHKBSプレミアム『BS歴史館』BS朝日『恋するドライブ』をはじめテレビ、ラジオ、雑誌など幅広く活躍中。